医院名:大堀IBDクリニック 住所:〒155-0032 東京都世田谷区代沢1丁目27−3 電話番号:03-6450-8200

クローン病(CD)

クローン病とは

クローン病(Crohn’s Disease:CD)は口から肛門までの消化管全体に炎症がおこる病気です。炎症により縦長の潰瘍(縦走潰瘍)、口内炎のような円形の浅い潰瘍(アフタ)がスキップして認められるのが特徴です。

主な症状は発熱、下痢、腹痛、体重減などですが、腸管外合併症として、アフタ性口内炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、強直性脊椎炎、関節炎、胆石・腎結石などを認めます。クローン病は浅い粘膜から炎症が起こりますが、腸管壁の深い部分まで炎症がおよぶと様々な腸管合併症を引き起こします。腸管合併症としては狭窄(腸が狭くなること)、瘻孔(ろうこう:腸と腸、腸と他の臓器・皮膚がトンネルを形成してつながること)、膿瘍(膿が溜まること)、肛門病変(痔瘻、肛門周囲膿瘍)などがあります。

クローン病でも下痢や腹痛などの症状が強い活動期と症状が安定している寛解期を繰り返すことが多く、病状が安定しても再び悪化(再燃)することがありますので、再燃予防のために長期に薬を服用する必要があります。

クローン病の検査

クローン病の診断を単独で行える検査はありません。
問診、診察に加え、血液検査、便検査、内視鏡やレントゲン、CTなどの画像検査を行って診断します。

採血検査

炎症の指標としてCRP、貧血の指標としてヘモグロビン(Hb)、栄養状態の指標として血清総タンパク、アルブミンなどを測定し重症度を評価します。また、投与中の薬剤の副作用を調べるためにも必要です。

便検査

主にほかの病気(感染性腸炎など)によって下痢が起こっていないかを確認するために便の培養検査をします。

画像検査

潰瘍性大腸炎と異なりクローン病は口から肛門までの消化管全体に病変が起きますので大腸内視鏡検査だけでなく、上部(食道・胃・十二指腸)内視鏡検査、小腸内視鏡検査、レントゲン(小腸造影、注腸造影)検査、CT・MRI検査などを行って総合的に判断します。

クローン病の治療

クローン病(Crohn’s Disease:CD)も潰瘍性大腸炎同様に、完治できる内科治療法がまだないのが現状です。したがって、内科治療の目標は寛解期を長く維持してQOLの向上を目指すことになります。

クローン病の治療も寛解導入療法寛解維持療法の2つに分かれますが、潰瘍性大腸炎と異なり薬物療法以外に栄養療法も行われます。

寛解導入治療のみで使用する薬剤にはステロイドがあります。寛解維持治療のみで使用する薬剤には免役調節薬があります。寛解導入、維持のどちらにでも使用できる二刀流の薬剤には5-ASA製剤、生物学的製剤があります。栄養療法は寛解導入、維持のどちらにも用いられます。狭窄、瘻孔、膿瘍などの腸管合併症や大量出血は内科治療の限界であり手術の適応となります。

クローン病では病変部を手術により取り除いても再度炎症が起き新たな病変が生じる(再燃)ことが多いので、できるだけ腸管を温存する手術が行われます。したがって、手術は狭窄や瘻孔、膿瘍などの部分だけを局所に切除する小範囲切除が原則です。クローン病の手術は潰瘍性大腸炎と異なりQOLの改善を目指す姑息的な手術に過ぎず、根治治療ではありませんので、術後も再燃予防のために内科治療が継続されます。

クローン病の内科的治療

5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤

クローン病で用いられる5-ASA製剤はサラゾピリンとペンタサの経口剤のみです。小腸型や小腸・大腸型クローン病では小腸でも作用するペンタサを用いなければなりませんが、大腸型の場合は大腸で作用するサラゾピリンの方が有効です。経口剤は再燃予防のために寛解期でも長期に服用する必要があります。

副腎皮質ステロイド

ステロイドは炎症を抑える力が強く、即効性があるため5-ASA製剤で症状の改善を認めない中等症以上の患者さんに対して用いられます。代表的な薬剤としてプレドニゾロン(プレドニン)があります。通常は経口で投与しますが、症状が重い患者さんでは入院して経静脈的に点滴投与します。この薬剤は強力な抗炎症効果があり中等症から重症の患者さんに用いられますが、長期間にわたり服用すると様々な副作用が発現しやすいので、症状の改善にともない減量中止にすることが重要です。寛解維持効果はありませんので再燃の予防のための維持療法には用いません。経口剤、注射剤があり、重症度によって使い分けます。一方、ブデソニド(ゼンタコート)はクローン病で使用可能なカプセル型の経口ステロイド剤です。局所で効果を発揮しますので、プレドニゾロンと異なり全身への副作用が少なく安全性が高いステロイド剤です。下部回腸から右側結腸の患部に有効成分が直接作用して抗炎症作用を発揮します。回盲部(回腸の終末部ら盲腸)に病変がある軽症から中等症の患者さんに有効です。

生物学的製剤 (バイオ製剤)

クローン病で使用できる生物学的製剤には炎症を引き起こすサイトカインの働きを抑える抗TNF-α抗体製剤(レミケード、ヒュミラ)、抗IL-12/23抗体製剤(ステラ―ラ)と炎症を引き起こす白血球(リンパ球)の大腸組織内への進入を抑える抗α4β7インテグリン抗体製剤(エンタイビオ)の4剤があります。炎症の程度が強く、ステロイドなどの従来の治療を行っても効果が十分に得られない中等症以上の患者さんに寛解導入と寛解維持の両方で使用されます。潰瘍性大腸炎では5-ASA製剤→ステロイド→生物学的製剤と徐々に治療を強化していくStep-up療法が原則ですが、クローン病ではステロイドをスキップして早期より生物学的製剤を投与するTop-down療法が推奨されています。

免疫調節薬

免疫調節薬はもともと臓器移植時の拒絶反応の抑制や白血病などの治療薬として開発されましたが、クローン病にも有効なことがわかり今日では広くクローン病に使用されています。ステロイドの減量・中止により再燃を繰り返す患者のステロイドの減量中止と寛解維持のために用いられる薬剤です。アザチオプリン(イムラン、アザニン)という錠剤や6-メルカプトプリン(ロイケリン;未承認) という散剤が使用されますが、効果が現れるのに2~3ヵ月かかります。重篤な副作用として白血球減少がありますが、最近では遺伝子のタイプを血液検査で調べることで副作用が起きるかどうかが事前にわかるようになりました。

抗菌薬

痔瘻、肛門周囲膿瘍などの膿が溜まる肛門病変にメトロニダゾール(フラジール)、シプロフロキサシン(シプロキサン)などの抗菌剤が用いられます。

血球成分除去療法

薬物療法ではありませんが、体外循環装置を用いて血液を一旦、体外に取り出し、炎症の原因となっている活性化した顆粒球などをカラムを通して選択的に除去する治療法でGMA(顆粒球吸着除去療法)と呼ばれます。薬物療法による治療効果が得られにくい場合や、副作用により薬を使用できない場合に行われますが、大腸に病変がある大腸型の患者さんに有効です。

栄養療法

クローン病で特に小腸に広範囲に病変がある場合は通常の食事は吸収できず栄養不良に陥り、全身状態が悪化していくおそれがあります。通常の食事の代わりに、腸に負担のかからない特殊な栄養剤を摂取して低下している栄養状態の改善と腸管の炎症を抑える治療法が栄養療法で寛解導入効果と寛解維持効果があります。栄養療法には栄養剤を用いた経腸栄養療法と中心静脈から高カロリーの栄養分を投与する完全静脈栄養療法があります。

内視鏡的バルーン拡張術

狭窄の程度、長さが著しくなく、狭窄を起こした腸管まで内視鏡が到達できる場合に出血や穿孔といった合併症に注意しながら内視鏡的にバルーン(風船)で狭窄を拡張する治療です。

日常生活での注意点

クローン病の患者さんでも適切な治療を行い寛解状態を維持することができれば通常の日常生活を送ることができます。仕事や学業自体への制限は特にありません。適度な運動と十分な睡眠をとり、ストレスをためない生活を送ることが大切です。